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エンタープライズ
ビジネスの世界において、「エンタープライズ」という言葉は、単なる大企業を指す以上の意味を持っています。この言葉は、規模の大きさだけでなく、複雑な組織構造、高度な技術活用、そして市場への影響力を併せ持つ企業体を表現しています。エンタープライズビジネスは、現代の経済システムの中核を成し、イノベーションの推進力となると同時に、社会的責任の重要な担い手でもあります。 エンタープライズの定義は、業界や文脈によって若干の違いがありますが、一般的には従業員数1,000人以上、年間売上高が数億ドル以上の大規模な組織を指します。しかし、単純な数字だけでなく、市場でのリーダーシップ、複数の事業部門や地域にまたがる事業展開、高度に構造化された組織体制なども、エンタープライズの特徴として挙げられます。 エンタープライズビジネスの強みの一つは、その規模を活かした経済的優位性です。大規模な生産や調達によるコスト削減、広範な顧客基盤、多様な収益源などにより、市場の変動に対する耐性が高くなります。また、豊富な資金力を背景に、長期的な視点での研究開発や戦略的投資が可能となり、イノベーションの推進力となることも多いです。 一方で、エンタープライズ特有の課題も存在します。組織の肥大化に伴う意思決定の遅さや、官僚主義的な体質による柔軟性の欠如などが指摘されることがあります。また、市場環境の急速な変化に対応するための組織変革の難しさも、エンタープライズが直面する重要な課題の一つです。 テクノロジーの進化は、エンタープライズビジネスのあり方を大きく変えつつあります。クラウドコンピューティング、ビッグデータ分析、人工知能(AI)などの先端技術の導入により、業務プロセスの効率化や意思決定の精度向上が図られています。例えば、エンタープライズリソースプランニング(ERP)システムの導入により、複雑な組織全体の資源を効率的に管理し、経営の可視化を実現している企業も多くあります。 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、エンタープライズにとって避けては通れない課題となっています。従来のビジネスモデルやプロセスを根本から見直し、デジタル技術を活用して新たな価値を創造することが求められています。この過程では、組織文化の変革や人材育成も重要な要素となり、多くのエンタープライズが試行錯誤を重ねています。 グローバル化の進展も、エンタープライズビジネスに大きな影響を与えています。国境を越えた事業展開が一般的となる中、異なる文化や規制に適応しつつ、グローバルな標準化と現地化のバランスを取ることが重要になっています。また、グローバルサプライチェーンの管理や国際的な人材の確保・育成など、新たな課題にも直面しています。 エンタープライズの社会的責任(CSR)や持続可能性への取り組みも、近年ますます重要性を増しています。環境保護、人権尊重、地域社会への貢献など、幅広い領域での取り組みが求められており、これらの活動が企業価値や競争力にも直結するようになってきています。特に、SDGs(持続可能な開発目標)への対応は、多くのエンタープライズにとって経営戦略の重要な要素となっています。 イノベーションの推進も、エンタープライズの重要な課題です。組織の大きさゆえに硬直化しがちな体質を克服し、スタートアップのような俊敏性と創造性を取り入れる efforts が行われています。社内ベンチャー制度の導入、オープンイノベーションの推進、アジャイル開発手法の採用など、様々なアプローチが試みられています。 人材管理もエンタープライズならではの課題を抱えています。多様な背景を持つ従業員の管理、世代間のギャップの解消、グローバル人材の育成など、複雑な人事戦略が必要とされています。また、働き方改革の推進や従業員のウェルビーイングへの配慮など、時代の要請に応じた取り組みも求められています。 エンタープライズのガバナンスも重要な論点です。株主、顧客、従業員、地域社会など、多様なステークホルダーの利害を調整しつつ、透明性の高い経営を行うことが求められています。コーポレートガバナンス・コードへの対応や、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からの評価など、企業の統治体制に対する社会の目は厳しくなっています。 データセキュリティとプライバシー保護も、エンタープライズが直面する重要な課題です。大量の顧客データや機密情報を扱う企業として、高度なセキュリティ対策が不可欠です。GDPR(EU一般データ保護規則)などの規制への対応も含め、データの適切な管理と活用のバランスを取ることが求められています。 エンタープライズビジネスの未来は、テクノロジーの進化と社会の変化によってさらに変容していくでしょう。AIやIoTの活用による業務の自動化と効率化、ブロックチェーン技術による取引の透明性向上、5Gなどの次世代通信技術によるビジネスモデルの革新など、新たな可能性が広がっています。 同時に、環境問題や社会的格差の拡大など、グローバルな課題に対する取り組みも、エンタープライズの重要な役割となっていくでしょう。企業の存在意義(パーパス)を明確にし、社会的価値と経済的価値の両立を図ることが、これからのエンタープライズビジネスの成功の鍵となると考えられます。 エンタープライズビジネスは、その規模と影響力ゆえに、経済システムの中核を担う重要な存在です。複雑な課題に直面しながらも、イノベーションと社会的責任の両立を図り、持続可能な成長を実現していくことが求められています。テクノロジーの活用と人間中心の経営のバランスを取りながら、エンタープライズは新たな時代の牽引役としての役割を果たしていくことでしょう。
Research
GitLab – 「フルリモート」を競争優位とするコーポレートデザイン
バージョン管理ツールやCI/CDなどモダンなソフトウェア開発に必要なDevOpsプラットフォーム「GitLab」を開発/提供する米国のテクノロジー企業GitLab Inc.(以下GitLab)は、世界で約2,000人の全社員がフルリモートで働く会社です。リモートワークはコロナ禍を契機に新しい働き方として市民権を得ました。しかし、コミュニケーションの断絶やマネジメントの難しさ、従業員のバーンアウト等の様々な課題があり、コロナウイルス感染拡大が落ち着きを見せた足元では、オフィス回帰を打ち出す企業も少なくありません。本記事では、GitLabのフルリモート・非同期での働き方を可能とするコーポレートデザインや運営手法にフォーカスを当ててご紹介し、次代の組織モデルや働き方に関するインサイトを得たいと思います。
Transformation
DXの成否を占う、組織のOS
かつて隆盛を極めた⽇本のAV機器産業、モバイルインターネット産業は、2007年のiOSとAndroidの登場によって、ゲームの盤⾯そのものを覆されました。
Spotlight
"長期的な視点"によって加速する、大手企業のデジタル・トランスフォーメーション|ジャフコ グループ井坂省三氏
デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第4回はジャフコ グループ パートナーの井坂省三さんにお話を伺いました。井坂さんは「長期的な視点を持つことが大切」と言います。大手企業においてDXを推進していくポイントは何か、そしてスタートアップ側が大手企業との連携で意識すべきことは。井坂さんの大手企業変革論に迫っていきます。
Product
プロダクトを進化させる環境:ソフト面
事業の根幹をなすプロダクト、その運営を推進するプロダクト開発人材は、どのような環境を求めているのでしょうか。
Spotlight
日産、資生堂を改革した「プロ経営者」からの学びを、若きリーダーたちに伝えたい|亀山満氏
カルロス・ゴーン氏率いる変革期の日産自動車(以下、日産)でグローバルプロジェクトを手がけ、プロ経営者として知られる魚谷雅彦氏とともに資生堂をスピーディな意思決定ができるグローバル企業へと変革。そしてコロナの渦中で歴史ある製造業大手、三菱マテリアルのDXを推進——。日本を代表するエンタープライズ企業において、数々の本質的な改革をIT面から支えてきたのが、グロービングのシニアエグゼクティブアドバイザーでコネポジの代表を務める亀山満氏です。
PRESS
ROUTE06、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」のプロダクト開発で三菱商事と提携 〜流通事業者の取引仲介業務をクラウド上で共有・可視化・推進~
株式会社ROUTE06は、三菱商事株式会社と提携し、見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal(パスポータル)」のプロダクト開発を行ったことを発表します。
Spotlight
「覚悟を固めて取り組む」。新規事業立ち上げとプロダクト開発への挑戦 | 三菱商事株式会社 清田 岳人氏
鉄鋼業界をはじめとした素材サプライチェーンの川中領域には、数多のバイヤーとサプライヤーの間に立ち、取引を柔軟に仲介する流通商社や問屋が多数存在します。そのような流通事業者特有の様々な取引バリエーションや、取引条件の変更・修正といったイレギュラーな業務にも対応したデジタルプロダクトとして、三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」)により見積・受発注プラットフォーム「PaSS-Portal」の提供が開始されました。
Product
Adobeのクラウド化に学ぶXaaS化の真髄
前回の記事 XaaSの類型とメリット で紹介した通り、XaaSはプロバイダーにもユーザーにもメリットがあり、もはやその潮流は不可逆的と捉えるのが自然でしょう。プロダクトを売り切りモデルで販売するのではなく、サービスとして提供することで、ユーザー価値の実現に重点を移していくことがXaaS化への第一歩です。
Spotlight
短期的な売上よりも大切なのは「どれくらいの生涯価値を提供できるか」。大手企業に変革をもたらすSaaSの在り方 | ALL STAR SAAS FUND 前田ヒロ氏
デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとした大手企業の変革に必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第3回はALL STAR SAAS FUNDマネージングパートナーの前田ヒロさんに話を伺いました。SaaS特化のベンチャーキャピタルを運営している前田さんは「SaaSは変革のきっかけを提供する存在」と言います。大手企業の変革においてSaaSが果たす役割、そしてスタートアップとの連携で意識すべきことは。前田さんの大手企業変革論に迫っていきます。
INFORMATION
ISMS認証取得のお知らせ
、2023年2月12日付でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得したことをお知らせいたします。
Spotlight
"デジタル先進国" 東南アジアに学ぶ変革のヒント。問われる「経営者の覚悟」|ジェネシア・ベンチャーズ 田島聡一氏
デジタルの普及によって産業の垣根が低くなる中、新たな事業機会と経済価値を創出するため、これまで日本経済を牽引してきた大手企業の事業や組織に変革が求められています。大手企業が変革を進めるために必要なことは何か──そのポイントをベンチャーキャピタル(VC)のパートナーの視点から語っていただく連載「VCから見た、大手企業の変革論」。第2回はジェネシア・ベンチャーズ代表取締役/General Partnerの田島聡一さんにお話を伺いました。田島さんは大手企業の変革には「目指す姿を明確にすること、そしてそれらを実現する経営トップの覚悟が必要になる」と言います。JVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)の副会長及び大企業連携部会の部会長も務められている田島さんの大手企業変革論に迫っていきます。
Product
XaaSの類型とメリット
インターネットを介してソフトウェアを提供するSaaSを皮切りに、あらゆるものがサービス化されるXaaS(Anything as a service)が近年のトレンドになっています。これまでオンプレミスで提供されていたソフトウェアとは違い、エンドユーザーはPCやスマートフォンといったデバイスを活用し、どこでもサービスを享受できるのがXaaSの特徴の一つです。本記事では、具体的にどのようなXaaSが存在するのか確認した上で、B2Bのサービスを中心にプロバイダー/ユーザー両面からXaaSのメリットを整理していきます。